負けても一生懸命やればいい。思い出に残ればいい。
高校野球というか、学生スポーツ全般をメディアで取り上げるときにはほとんどといっていいほど、こんな見方がされる。ただ、現実はそんなに甘くない。勝つために学生はいろんな手を使って勝とうとする。なぜなら、絶対に負けたくないから。そんなことを改めて思い出させる1冊。
私立彩珠学院高校の上層部は予算を削るため、野球部の廃部を決定。それを防ぐための条件は1つだけ。翌年の夏の甲子園大会に出場すること。ただ、今年の夏の大会では1回戦負け。このままじゃ、甲子園になんて行けるはずがない。そんな学校の監督になったのは鳩ヶ谷圭輔(はとがやけいすけ)という男。現役時代、審判を殴ったこともある経歴の持ち主。ただ、甲子園に行けなかった試合の悔しさで何度も夜中に目が覚めるぐらい、勝ちにこだわる監督。
甘ちゃん監督に代わり監督に就任した鳩ヶ谷はチームに対して、「さわやか」、「ひたむき」、「正々堂々」の3つの言葉を禁句にし、勝つための野球をチームに浸透させ始める。人をD(Dog)、C(Cat)、M(Monkey)の3つに分けて扱ったり、8勝92敗のチームでも甲子園に行ける話などなどは今までの青春野球漫画にはない視点。
最近、スポーツの青春じゃない側面を描くようなマンガが増えている。プロ野球のお金の側面を描いた『グラゼニ』なんかも、その1つ。
高校野球の世界は多くの人がイメージしているほど、真っ向勝負ではない。名門と呼ばれる高校は勝つために日常的にサイン盗やクセを盗むことをしている。高校野球の世界では有名な高校の附属中学校の話を聞いたことがあるので、間違いない。
ただ、これも含めて高校野球の価値がある。勝つためにさわやかでも、ひたむきでも、正々堂々でもない手を使う。「負けても練習の成果が出せたらいい!」なんていう言葉に逃げない、勝ちたいという強い気持ちを持つ高校野球漫画。変わった練習法や心の持ちようなどは日常に参考になるかもしれません。
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小檜山 歩
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