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なぜ、人は生まれたのか。イエス・キリストとは何者なのか。壮大な物語が始まる。 『キリストのクローン/新生 上』

坂本龍馬ブームの時に流行ったアイディアに、「今の日本に坂本龍馬がいたら…」なるものがあった。停滞している日本社会を坂本龍馬が変えてくれるんじゃないか、という切り口だった。興味をもつ人がそれなりに居たからこそ、特集されたんだろう。ただ、「今の世界にイエス・キリストがいたら…」という話があったとしても、日本人の多くの人はそこまで興味を持たないのではないか。海外だったら、反応は逆になるだろうけど。

ただ、坂本龍馬とイエス・キリストには大きな違いがある。坂本龍馬が生身の人間であることに疑問を抱く人は少ないだろうけど、イエス・キリストは生身の人間であると断言される対象ではない。これは、キリスト教をよく知らない人でもイメージできること。イエス・キリストは神様と考えたり、神様と何かしらの関係があるとされている。

手をかざすと病気が治る、湖の上を歩くなどの奇跡を起こす。聖書の中でイエス・キリストは特殊な力の持ち主として語られる。また、聖書はこの地球がどのようにして出来たのか、という物語も含まれている。聖書によると神様は7日間で世界を作ったとされている。そして、人間も神様によって作られた。

イエス・キリストとは何者なのか?そして、地球はどうやって出来て、人間はなぜ生まれたのか?

この物語はイエス・キリストが現代に現れたらどうなるのかという切り口から、イエス・キリストとは何者だったのか、地球になぜ生命が生まれたのか、などの問いに1つの仮説を立てていく壮大な物語三部作の一作目上編。

十字架にかけられたイエス・キリストを包んだとされるトリノの聖骸布(※実在します)の調査に乗り出す研究チームに、グットマン教授との大学時代のコネで入り込むアメリカ人新聞記者・デッカー・ホーソーン。調査中に不可解な事が起こるも、時間が経っていく。ただ、その調査でグットマン教授は聖骸布についていた細胞を見つけ、持ち帰り、研究を進める。細胞を見せられたデッカーは驚く。死んでいるはずの細胞が生きていることに。グットマン教授はその細胞を用いて、ある試みを行う。イエス・キリストのものであろう細胞を用いてクローンを作ること。つまり、イエス・キリストのクローンを作ろうとする。

ただ、相変わらず、世界は闘いに満ち溢れている。中東ではイスラエルとアラブ勢力の対立は続き、デッカーはイスラム勢力に拉致され、監禁生活を余儀なくされる。また、世界は悲劇に襲われる。大量の人が理由もわからず、亡くなっていく。物語の言葉を借りると「ただ、人が死んだ」。解剖しても原因が分からない。朝起きたら隣で大切な人が亡くなっている。アメリカでは15%の人が亡くなる。世界は一瞬混乱する。ただ、生き残った人々はどうにかして社会を動かしていく。中東ではイスラエルに対するアラブ連合の総攻撃も行われ、国連を中心とした国際政治も動く。

こんなダイナミックな物語が科学とSFと歴史と国際政治と宗教などなどの分野がフル動員させられ進んでいく。トリノの聖骸布との遭遇から、イスラム勢力による拉致事件。母国に戻り、家族と再会したのも束の間、大勢の人間が大惨事によって「ただ、死んだ」。そして、アラブ連合のイスラエルへの攻撃。国際政治と末端の人々のダイナミックな物語はまだ、始まったばかり。

国際政治やキリスト教の小ネタ、SF好きにはたまらない物語。☆4つ。

【引用集】

人間たちはまた、個人の欲望を正当化するために宗教のちがいを利用しているんだ。宗教は人間を支えるためのものであって、人を殺したり破壊したりする言い訳として使うものじゃない(277)

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小檜山 歩

コンサルタント日系総合コンサルティングファーム
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。