大学で本当に影響を受けた人の人間の内の一人。会ったこともないし、本や映像作品に触れただけだけど、自分に大きな影響を与えた人が語るメディア論。先に言っておきますが、☆5つです。贔屓目もあるかもしれませんが。客観的なメディア研究なんて存在しないと思うから、自分はあんまり気にならないけど、物凄く主観的なメディア論。それは、新聞やテレビなどの様々な媒体を筆者自身の経験を通じて語っているから。ということと、この人が学者上がりではなく、ドキュメンタリー制作から上がってきているからだろう。でも、本当に充実している。
前に、オウムについて同じ筆者が書いた「A3」と同時に買ったけど、もっと早く読んでおきたかったと感じるとともに、自分の中のメディア論の整理の手助けになった。本の中でドキュメンタリー映像作家、佐藤真さんの
P147 ドキュメンタリーの現場には、おのずと客観的事実とか、本当の真実だとかは存在しなくなる(略)その意味ではドキュメンタリーは、不可解なこの世界についての、一人の映画作家の私的な見取り図であり、映像に映った事実の断片を再構成して生み出される、「私」のフィクションなのである
(佐藤真著『ドキュメンタリー映画の地平』凱風社)
という言葉を引用しているが、それがドキュメンタリーだけでなく、他のテレビ、新聞などの全てのメディアに適用され、それを自覚しながら、メディアの担い手は行動し、受け取り手は読み取る必要性を伝えている。筆者が
P107 もちろん誰かを傷つける可能性があるのなら、それはできるだけ回避すべきだ。でも同時に、そもそも人を傷つけずに表現することなど不可能なのだということを、メディア関係者はもっと自覚するべきだ。
つまり、人を傷つけないのではなく人を傷つける覚悟。開き直れという意味では決してなく、その覚悟をまずはしたうえで、メディアに関わるべきなのだ。
としていることからもよくわかる。そして、引用しているトマス・ジェファーソンの言葉の通り、
P15 「何も読まない者は、新聞しか読まないものより賢い。なぜなら虚偽を信じる者より、真実に近いからだ」
と多様な見方の必要性と、1つを信じることの大きなリスクという問題意識を持っている。江川紹子さんとのバトルも興味深い。2人の独立してジャーナリズムらしきものを担っている人の考え方が少し垣間見える。マスメディアにどっぷり浸かっている社会のおかしな所に気付きたい人はもちろん、大学でメディアを学んでいる人は必ず読んで欲しい。また、性懲りも無く、この本からいろいろ書いてみようと思います。1つ、この本から言えることは、めんどいけど、今の社会を疑ってみること。それをしないととんでもないことになるから。ということ。
これから、書きたいこと。
1. 死ぬこと、悲惨の不感症に
2. 守られているメディア、裁かれなかったメディア
3. 戦争は、なぜ起きるのか
4. 拉致被害者の見えないもの(めぐみさんの遺骨、蓮池さんの過去)
5. 映像を汚すボイスオーバー
6. 死刑、また考える
7. 人が犯罪を起こすのは。それがなくならないのは
8. 例外の常態化、規律訓練
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小檜山 歩
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