ジェフ千葉を一時、名チームに変えた名称のサッカー観・やり方と人生を追った本。ジェフ千葉にオシムが監督として就任した場面から始まり、今はなきユーゴにも話が及ぶ。そして、今に至る。構成は普通でも、素材と中身の魅力。それに☆4つ。
その中でマスコミに対してかなりオシムが意識をしていることに驚く。
P22 「勇人が記者に囲まれているのを見ると、私は頭が痛くなる。若い選手が少し良いプレーをしたらメディアは書き立てる。でも少し調子が落ちて来たら一切書かない。するとその選手は一気に駄目になっていく。彼の人生にはトラウマが残るが、メディアは責任を取らない」
P27 「皆さんも新聞を読む時に行と行の間、書かれていない部分を読もうとするでしょう?サッカーのゲームもそのような気持ちで見て欲しい」4月29日・京都戦後の会見
P38 「言葉は極めて重要だ。そして銃器のように危険でもある。私は記者を観察している。このメディアは正しい質問をしているのか。ジェフを応援しているのか。そうでないのか。新聞記者は戦争を始めることができる。意図を持てば世の中を危険な方向に導けるのだから。ユーゴの戦争だってそこから始まった部分がある」
ここにきて、少しのてがかり。オシムがメディアに対して、意識をする理由。それがユーゴの戦争。
P53 メディアと我々の関係というのは両方のサイドがコレクト、正しいものでなければならない。監督が選手を使わないのには、必ず理由がある。その理由というのは、公言できない場合がある。それは技術的なことではなく、心理的な要素の場合だってある。
そして、ユーゴ内戦の空気が高まった時、こんなことがあったらしい。1990年6月3日、ユーゴVSオランダ。メディアが行ったこと。
P60 最悪だったのはスタンドのムードだけではない。ピッチサイドでは、新聞記者がベンチの近くまで寄って来ては、スシッチは代えたほうが良い、あるいはミヤトビッチを出すべきだ、と主張をぶつけるという越権行為までやりだした。各民族の権益を代表するかのような記者たちが、身贔屓な言説を現場の最高責任者である自分に向けて発する
そして、内戦が始まる。
P153 彼は最後の最後まで、他民族融和、ユーゴスラビア主義者として振る舞った
内乱の中でユーゴスラビアという国がなくなることを拒み、ずっとユーゴスラビア代表監督として指揮したかったオシム。多民族融和を目指した。そして、最後のユーゴ代表監督。皮肉。
PKに関する話、求心力、イエローカードを現役時代にもらったことがない、会見をコントロールする様子。いろんなことがたっぷり。この本はサッカーについて学ぶ入門書としてもおもしろい。でも、それよりも、ユーゴ分裂という世界史に残る悲惨な出来事のド真ん中で、スポーツに関わってきた人間の話として読めると思う。そして、スポーツジャーナリズムの難しさとどうすれば良いのか。ということも。いろんなテーマ、サッカーの話だけを読みたいという人にはふさわしくないかもしれない。でも、いろんなテーマをサッカーを通じて読んでみたい人には絶対おススメの一冊。
小檜山 歩
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